(社)日本考古学協会 会長声明  2015年5月22日

 

                                            日考協 第12号
                                            2015年5月22日

文化庁長官   青柳正規 様
静岡県知事   川勝平太 様
静岡県教育長  木苗直秀 様
沼津市長    栗原裕康 様
沼津市教育長  工藤達朗 様
                                       一般社団法人日本考古学協会
                                             会長 高倉洋彰

        「静岡県沼津市高尾山古墳の保存を求める会長声明」の送付について

日頃より本協会の事業推進にあたりご理解、ご支援を賜り誠にありがとうございます。
さて、本協会では、本年5月22日の理事会において、別紙のとおり、静岡県沼津市高尾山古墳の保存を求める会長声明を発出しましたので、送付いたします。
本声明の趣旨をおくみ取りいただき、ご高配を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

                       記

                   一、 別添書類一通
                                                  以上


           静岡県沼津市高尾山古墳の保存を求める会長声明

 静岡県沼津市東熊堂に所在する高尾山古墳は、2008~09年度の発掘調査で、古墳時代最初頭(3世紀)の前方後方墳と判明しました。本古墳は、(1)墳丘全長62.2mという、この時期としては日本列島屈指の規模をもち、(2)初期古墳の多くが丘陵上に築かれるのとは異なって平地に構築されたため墳丘盛土がよく保存され、(3)埋葬施設の朱塗り木棺から青銅鏡(後漢末)や鉄槍・鉄鏃・鉄ヤリガンナ・石製勾玉など豊富な副葬品が出土した、(4)墳丘や周溝から北陸や近江系の土器が出土して他地域との交流が確認できる、の諸点から、畿内の最初期古墳と肩を並べる駿河の最有力首長墳と考えられます。
 したがって、高尾山古墳は駿河地域だけではなく、日本列島における初期国家形成過程の画期である、古墳文化形成を解明する上できわめて重要です。こうした評価は、沼津市教育委員会発行の調査報告書、沼津市教育委員会や静岡県考古学会主催のシンポジウムで繰り返し確認されています。こうした学術評価を受けて、当協会では2012年に高尾山古墳の保存に関する要望書を関係機関に提出しました。
 しかし、現在も都市計画道路の建設事業が進められており、このままでは駿河地域における古墳時代最初頭の重要遺跡であり、駿河の歴史・文化的重要性を知る基点である高尾山古墳が永遠に失われてしまいます。人類共有の財産として世界遺産登録された富士山は、その歴史的な景観の保護が求められています。この高尾山古墳もその最も重要な一員であり、沼津市・静岡県だけでなく日本国民共有の文化遺産として将来にわたって保存し、活用されるべきものです。
 本協会は、こうした高尾山古墳の重要性に鑑み、道路計画事業を見直すことによって、本古墳の適切な保存と活用が図られることをあらためて強く要望いたします。本古墳の歴史文化遺産としての重要性の社会発信に関して、学術面から最大限の協力を行う所存です。
 2015年5月22日
                                        一般社団法人日本考古学協会

                                            会長 高倉洋彰

静岡県考古学会 保存・活用声明  2017年6月11日

 

                                            2017年6月11日

文化庁長官  宮 田 亮 平 様
静岡県知事  川 勝 平 太 様
静岡県教育長 木 苗 直 秀  様
沼津市長   大 沼 秀 穂 様
沼津市教育長 服 部 裕 美 子 様

                                         静 岡 県 考 古 学 会
                                         会 長  植 松 章 八
                 


        「高尾山古墳の保存・活用についての声明」の送付について

 表記の件について、静岡県考古学会では別添書類のとおり、静岡県沼津市高尾山古墳の保存を求める声明を発出しましたので、送付いたします。
 本声明の趣旨をおくみ取りいただき、ご高配を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

                      記

                 一、別 添 書 類   一通

                                                以上

           沼津市高尾山古墳の保存・活用についての声明

 高尾山古墳は、愛鷹山南東麓に築造された全長約62メートルの前方後方墳です。沼津市によって行われた発掘調査により、その築造年代は3世紀前半に遡る日本列島でも最古段階の大型古墳であることが明らかになり、中国鏡や列島各地との交渉を示す重要な品々が出土したことから、日本の初期の国家形成を正しく理解するうえで欠くことのできないきわめて重要な文化遺産であることが明らかになりました。
高尾山古墳をめぐっては、2015年5月に当初の道路建設計画に伴って高尾山古墳の取り壊しが決定されましたが、その後の世論の高まりから古墳の撤去計画が撤回され、「高尾山古墳保存と都市計画道路(沼津南一色線)整備の両立に関する協議会」において、古墳の保存と道路整備の両立をはかる整備案が検討結果として評価され、特に整備案Bとする案が推奨されました。静岡県考古学会では、この間、高尾山古墳の出現とその背景をめぐってシンポジウムを開催するなどしてその評価を考えるとともに、声明を発出するなどして高尾山古墳の保存を求め、また、協議会の結果によって高尾山古墳の保存と道路整備の両立がはかられることを歓迎し、適切な古墳の保存・活用が期待される整備案Bで整備が進められることを強く支持してまいりました。
 一方、最近になって沼津市のホームページには「推奨された整備案の実現に向けた調整の目途が立たない状況となり」、「推奨された整備案にこだわらず」、「協議会で示された他の整備案についても検討を深め」るとする説明が記されました。しかしその調整の内容については明らかにされていません。また、協議会を経て沼津市は「地域資源として高尾山古墳の保存・活用を図るためには、国史跡として指定を受けるべきもの」との考えを示していますが、今後も協議会の内容が尊重され、この方針が貫かれることが望まれます。
 以上のことから、静岡県考古学会では「高尾山古墳保存と都市計画道路(沼津南一色線)整備の両立に関する協議会」の評価にもとづき古墳の保存と道路整備の両立がはかられ、推奨案である整備案Bで整備が進められることを引き続き期待します。また、高尾山古墳が我が国の歴史・文化等の正しい理解のため欠くことができないものであり、将来の文化の向上発展の基礎をなす重要な文化財の一つとの認識のもと、国史跡として指定を受けるべく、あらためて今後さらに古墳を適切に保存する措置が取られ、隣接するガイダンス施設や学芸員の配置など十分な活用がはかられる体制がとられることを期待します。

2017年6月11日
                                             静岡県考古学会

私たちの運動に、ご賛同いただいた方々のお名前です。(抜粋)

浅井  治    歯科医
磯部 泰行    医師
小野 眞一    考古学者
加藤 雅功    日大名誉教授
木村 光正    本光寺住職
菊川 信明    三陶会
小池 一廣    デザイン研究所
坂部 利夫    弁護士
笹津 海道    妙海寺住職
佐藤 光徳    吉祥院住職
下山 光悦    大中寺住職
塩谷 正憲    国士舘大学教授
仙石  規    医師・郷土史家
土屋 詔二    学園理事
中川 寿一    旭園
長澤 靖夫    前沼津市教育長
長谷川 徹    柳屋
林   茂樹   乗運寺住職
保坂 輝夫    市内千本
細沼 賢一    弁護士
阪東 邦彦    まちづくり研究会会長
原井 慈鳳    妙泉寺住職
横田 泰洋    塩満寺住職
山本 龍樹    歯科医
渡辺 利明    団体役員
飯尾 紀彦    デザイン研究所
小林 俊憲    医師
鍋倉 郁子    バイオリニスト
保坂 輝夫    ギャラリーほさか
赤塚 次郎    NPO理事長
伊藤 恭彦    名古屋市立大学
鎌田 東二    京都大学
刈谷 俊介    俳優・考古学会員
篠原 和大    静岡大学
関根 俊一    奈良大学
田口 康大    東京大学
中沢 新一    明治大学
西山 要一    奈良大学
原田 眞人    映画監督
松本 邦弘    名古屋大学
宮地  昭    龍谷大学
山極  寿一   京都大学
吉川 佐紀子   京都大学
吉田 久美    名古屋大学
菊池 直樹    兵庫県
鷲崎 弘朋    全国邪馬台国会長
松田  度    文化財保存全国協議会
八木 洋行    民俗研究家
若井  正一   医師・考古学
原  秀三郎   静岡大学名誉教授

〇その他海外の大学教授。編集者等肩書抜きの賛同者もおります。